パワーハラスメントの可能性をメールの文章から見つけ出す:パワハラメール自動判定システムの開発

パワーハラスメントの可能性をメールの文章から見つけ出す:パワハラメール自動判定システムの開発

Abstract

いじめや嫌がらせはあってはならないことですが、残念なことにあらゆるコミュニティーで起こりうる問題です。近年、職場におけるパワーハラスメント(以降、パワハラ)の相談件数が増加しています。指示を出す立場の人、つまりパワーを持つ人が、指示を受ける立場の人にいじめや嫌がらせをするパワハラは、社会的にも大きな問題となり、通称「パワハラ防止法」という法律まで成立しました。これにより、パワハラの早期発見と防止が会社には義務付けられ、その対策が模索されています。そこで私たちは、パワハラの早期発見にAIを利用できないかと考えました。

私たちは、パワハラの手段の一つとしてメールによる精神的な攻撃に着目し、メールの文章を各品詞に分解して解析する技術とAIを組み合わせることにより、パワハラメールを検出できるかどうかを検討しました。パワハラワード(以降、PW)として「バカ」「アホ」を設定し、それらがメールの文章に使われているかどうかだけでなく、そのPWと共に頻繁に使われる単語(例えば「給料」「休日」など)をAIに導き出してもらい、それを踏まえた上でパワハラメールかどうかの判定を行いました。パワハラメール(PWを含むものと含まないもの)と通常メールを学習したAIは、PWが入っていれば、メールの長さに関係なくそれがパワハラメールであると判定することができました。また、PWが入っていないパワハラメールも、そのほとんどを正しく判定することができましたが、「成長」「出来る」などの前向きな単語が含まれていると判定が難しいことが示されました。通常メールがパワハラメールと判定されることはありませんでした。

職場でパワハラを受けた時に、そのことを自ら周囲に訴えるのはとても勇気が必要で、なかなか実行に移せず思い悩む人たちがたくさんいます。こうした社会問題を解決する一つの手段として、AIを使ったパワハラメール自動判定システムは大きな可能性を秘めており、職場だけでなく、学校やその他のコミュニティーでの応用も期待されます。今回の研究はまだ始まったばかりですが、今後PWの種類を増やして、検出の精度向上を図る予定です。

Publication

  • 平山健一郎, 豊谷純, 大前佑斗, 村田大治, word2vecと階層型ニューラルネットワークを活用したパワハラメールの自動判定, 人工知能学会 研究会資料(インタラクティブ情報アクセスと可視化マイニング研究会), vol.25, pp.24-28, 2020.11.20(オンライン開催).

Note

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文責: 大前佑斗

日本大学生産工学部マネジメント工学科 専任講師、人工知能リサーチセンター 研究員。ゼミ配属では、プログラミングや人工知能を、時間をかけ丁寧に学習したい方を募集しています。文系・理系、どちらでもokです。

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