動作の質を重視する: 人工知能が支援するサッカー選手のシュート練習

動作の質を重視する: 人工知能が支援するサッカー選手のシュート練習

Abstract

サッカー日本代表が「SAMURAI BLUE」や「なでしこジャパン」として世界の強豪と熱戦を繰り広げるようになって以来、日本のサッカー熱は高まる一方です。1点をとるために必死でボールを追いかけ、シュートを放つ選手たちは、毎日膨大な量の練習を積み重ねているのでしょう。時間内に決着がつかなかった場合に行われるペナルティ・シュートアウトも、勝敗を決める重要な局面となります。サッカー選手は、この非常に注目度が高くプレッシャーも大きい場面をも想定し、何回も繰り返しシュート練習をしているはずです。

3軸方向の加速度と角速度を測定する慣性センサは、アスリートの身体動作を計測する装置としてよく使用されています。慣性センサから得られるデータは動作の量的な判定に用いられることが多いのですが、アスリートがパフォーマンスを向上させるためには、動作のクオリティを判定することも大切であると私たちは考えています。例えば、サッカー選手が練習でクオリティの低いシュートを何本打っても、思ったような効果は上がらないと考えるからです。

そこで、サッカーのシュート練習において、一回のシュート動作がクオリティの高いものか低いものかをAIが判定できるかどうか検討しました。まず、20歳前後の男性3名(サッカー経験者1名、非経験者2名)の利き足の外くるぶし上部に慣性センサを装着し、実際にシュートを複数回打ってもらい、各シュート動作のデータを収集しました。次に、サッカー経験者の動作データを高クオリティ、非経験者の動作データを低クオリティとしてAIに学習させたところ、AIは学習済みのデータであれば高クオリティか低クオリティかを100%正しく判定することができ、学習したことのないデータであっても90%の確率で正しく判定することができました。

このようなAIによる動作クオリティ判定が実用化されれば、従来はアスリートが黙々と一人で行っていたような練習であっても、単に「動作をX回反復する」のではなく、「高クオリティの動作をX回反復する」ことを目標に練習することができるようになり、より大きな効果が得られるでしょう。あの選手にボールが渡ると確実にシュートを決められてしまう、と相手チームに警戒されるような優れたサッカー選手の活躍が期待されます。

Publication

  • 大前佑斗, 秋月拓磨, 高橋弘毅, 畳込みニューラルネットワークと慣性信号によるシュートフォームのクオリティ判定, 電子情報通信学会 総合大会2021, D-8-16, 2021.03.09(オンライン開催).

Note

この記事および画像は有償サービスにより作成されたものであり、本ページのみでの利用を想定しています。無断利用を発見した場合はご一報ください。

文責: 大前佑斗

日本大学生産工学部マネジメント工学科 専任講師、人工知能リサーチセンター 研究員。ゼミ配属では、プログラミングや人工知能を、時間をかけ丁寧に学習したい方を募集しています。文系・理系、どちらでもokです。

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