Abstract
皆さんはどのような遊園地に行きたいですか?では、質問を変えて、皆さんが遊園地の経営者だったら、どのようなアトラクションを来場者に提供しますか?自分が好きなアトラクションだけを集めて、自分が行きたいと思う遊園地を作ったとしても、果たしてビジネスとして成り立つでしょうか?
物事には試行錯誤がつきものですが、遊園地のように莫大な設備投資が必要となるビジネスでは、提供するアトラクションをあれこれいろいろ試してから、最善の組み合わせを決定するなんてことはできません。予想される来場者の特性に合わせて、どのようなアトラクションを組み合わせ、どのような価格設定にすると来場者数が増えるのかをシミュレートできれば、とても便利です。AIはこのような複雑な組み合わせ問題を考えるのが得意です。
私たちは、絶叫系・ホラー系・ファンタジー系などの各アトラクションの個数、テーマ性、目玉となるアトラクションやそれ以外のアトラクションの待ち時間といった遊園地の特性を組み合わせた24個の遊園地を提示し、3つの価格帯ごとに年間あたり何回来場したいかを尋ねるウェブアンケートを実施して、回答を得ました。そして、その回答データと回答者の特性(年齢、性別、誰と来場するかなど)を基に、来場回数を出力するAIを作成しました。このAIを使うと、いろいろな条件下(アトラクションの個数・構成、価格、待ち時間など)において、どのような特性の来場者がどのくらい来場したいと思うのかという「来場者の意思決定」を可視化することができました。さらに、このAIを用いると、さまざまな条件下での総来場者数と売上高のシミュレーションも可能になりました。例えば、入場料や待ち時間などの条件が同じ場合、どのようなアトラクション構成にすると売上高が最も高くなる可能性があるか、遊園地にテーマ性を持たせると総来場者数と売上高がどのくらい変化するか、といったことが推定できます。
このAIシミュレータにはまだまだ伸びしろがあり、将来的には売上を最大化する設備投資までも推定できるようになるかもしれません。こうしたAI支援ツールがますます進化し、その信頼性も高まれば、規模の大きなビジネスにも自信をもって挑戦できるようになることでしょう。
Publication
- 野澤裕基, 豊谷純, 大前佑斗, ニューラルネットワークを活用した遊園地の来場者シミュレータの構築, 電子情報通信学会技術研究報告集(ソフトウェアインタプライズ研究会), vol.119, no.419, pp.23-29, 2020.02
Note
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