Abstract
時間をかけて勉強をしてもテストの成績が必ず上がるわけではないことを、私たちは経験的に知っています。苦手科目に限って、集中的に勉強したつもりなのに結果が伴わなかったということもよく起こります。自分に合う勉強法を見つけようと、「私はこのやり方でテストの点数を〇〇点上げた」などのキャッチコピーを頼りに、体験談の記事や攻略本を読んだ人もいるでしょう。そこで私たちは、ある一定の学力を達成するのに有効な特定の学習行動、つまりどのように学習しているかを、AIを使って推定できるかどうか検討しました。
まず、126名の高校生を対象に12種類の学習行動を示し、それが自分に当てはまるかどうかを6段階で評価するアンケートを行いました。そして、その結果をもとに、特定の学習行動と数学のテストの得点(大手予備校が主催したものを利用)との関連を調べました。すると、テストの得点には、「公式や定理は覚えるだけではなく、どうしてそうなるかを考える」「問題を解く時は視覚的に考える」「苦手な問題や間違えた問題を繰り返し勉強する」といった学習行動が相互に作用している可能性が見出されました。そこで、決定木(樹形図によってデータを分析する手法)と最尤推定法(尤度を最大化するパラメータを求める方法)を用いて、各生徒がどのくらいそのような学習行動をとっているかを考慮しつつ、複数の学習行動が組み合わさった場合にテストで平均点が取れる確率をAIに計算させました。その結果、平均点をとる確率は、「苦手な問題や間違えた問題を繰り返し勉強する」ことに「とても肯定的」であると高くなり、「とても否定的」「否定的」または「やや否定的」であると低くなることが示唆されました。また、「苦手な問題や間違えた問題を繰り返し勉強する」ことに「やや肯定的」または「肯定的」である場合に、「公式や定理は覚えるだけではなく、どうしてそうなるかを考える」ことに「とても否定的」または「否定的」でなければ、平均点をとる確率は高くなるであろうことが示唆されました。
このように、AIはある成果を達成するのに有効な学習行動の組合せを推定してくれます。こうしたAIの予測から、いつもの勉強法を見直すヒントが得られるかもしれません。
Publication
- 大前佑斗ほか, 学力と学習行動の関係の分析, 2015年電子情報通信学会総合大会, 2015.03
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