最適な学習パートナーは誰?生徒の個性・学力・理解度をAIが数値化・可視化する「学び合い」支援システムの提案

最適な学習パートナーは誰?生徒の個性・学力・理解度をAIが数値化・可視化する「学び合い」支援システムの提案

Abstract

皆さんは、クラスメートに教えたり教えられたりしながら、協力して共通の課題を解決する「学び合い」形式の授業を受けたことがあるでしょうか?「学び合い」をする相手は、出席番号順、席順、仲の良い友達同士かもしれませんし、先生が指定する場合もあるでしょう。この場合、先生はただなんとなく組み合わせを決めるのではなく、各生徒の理解度と個性を踏まえたうえで、どうすれば学習効果が高まるかということを考えて、学び合いの相手を決めていると思われます。これは簡単なことではありません。なぜなら、生徒の個性は多様で、考えうる生徒の組み合わせは無数にあるからです。さらに、授業の進行とともに各生徒の理解度が変化する中、クラス全体としての学習目標を達成するとなると容易ではありません。

そこで、私たちは、教育学の専門家と共同で、リアルタイムで学び合いを支援するシステムの開発を試みました。まず、学び合いによる理解度に影響する6項目(わからない問題を友達に質問する・しない、など)を統計学的に見つけ、それを用いて生徒の個性を分類できるようにしました。次に、小学6年生1クラス(26名)を対象に、各生徒の学力と個性についてのデータを事前に得たうえで、社会科と算数の学び合い授業を行いました。そして、3つのタイミング(授業開始直後、中頃、終了時)の生徒の理解度と最も学び合った相手についてのデータを得ました。それらのデータをAIに学習させたところ、理解度が向上しやすいパートナー、クラス全体の理解度が最も向上する学び合いの形状、さらには、学び合いのキーパーソンとなる生徒は誰か、ということをAIは導き出し、先生にわかる様式で提示できるということがわかりました。

この研究により、「生徒Aと生徒Bは馬が合う、相性がいいみたいだ」「この生徒がクラスのキーパーソンになってくれるだろう」など、今までは先生が自身の経験と感覚に基づいて決定していたことを、AIが各生徒のデータ(個性、学力、リアルタイムでの理解度)を数値化・可視化することでサポートでき得るという未来像が示されました。

Publication

  • Yuto Omae, Tatsuro Furuya, Kazutaka Mizukoshi, Takayuki Oshima, Norihisa Sakakibara, Yoshiaki Mizuochi, Kazuhiro Yatsushiro, Hirotaka Takahashi, Machine learning-based collaborative learning optimizer toward intelligent CSCL system, Proceedings of the 2017 IEEE/SICE International Symposium on System Integration, pp.577-578, 2017.12.
  • 大前佑斗, 古屋達朗, 水越一貴, 大島崇行, 榊原範久, 水落芳明, 八代一浩, 高橋弘毅, 機械学習と数理最適化による最適な学び合いネットワークの構成手法, 電子情報通信学会技術研究報告集(ヒューマンコミュニケーション基礎研究会), vol.49, no.118, pp.107-112 2018.05.22
  • 大前佑斗, 古屋達朗, 水越一貴, 大島崇行, 榊原範久, 水落芳明, 八代一浩, 高橋弘毅, 知能情報処理を活用した学び合い支援システムCollaborative Learning Optimizer の提案 -モデル構造と学習者の個性に関する検討-, 電子情報通信学会技術研究報告(パターン認識・メディア理解研究会), vol.117, no.238, pp.193-198 2017.10.13

Note

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文責: 大前佑斗

日本大学生産工学部マネジメント工学科 専任講師、人工知能リサーチセンター 研究員。ゼミ配属では、プログラミングや人工知能を、時間をかけ丁寧に学習したい方を募集しています。文系・理系、どちらでもokです。

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