良い動作、悪い動作?ウェイトトレーニングの質を定量的に判定するための慣性センサ装着箇所の検討

良い動作、悪い動作?ウェイトトレーニングの質を定量的に判定するための慣性センサ装着箇所の検討

Abstract

大学のスポーツ施設や研究室では時折、アスリートが体に装置を着けてトレーニングを行っている様子を見かけることがあります。その装置は、おそらくアスリートの身体動作を計測するもので、収集したデータを使って様々な研究が行われます。そうした計測器の代表的なものが3軸方向の加速度と角速度を測定する慣性センサです。装着する慣性センサの数が多いほど収集されるデータ量も増えますが、その数の多さがアスリートの動作の妨げになるという欠点もあります。そこで、私たちは、できるだけ少ない装置数でトレーニングの質を判定できるようなデータを入手できるか、できるとすれば体のどの部分に慣性センサを装着すればよいのかについて検討しました。

まず、ベンチプレスやバックスクワットなどの6種のウェイトトレーニングの動作データを、体幹、左右の腕、左右の脚など計10カ所に付けた慣性センサを用いて収集しました。収集されたデータはたとえ慣性センサが一つであったとしても膨大な数値で、そのまま示されても人間が良し悪しを判断できるものではありません。そこで、私たちはコンピュータを使い、収集した動作データを「特徴量」という値に変換し、さらにそれぞれの特徴量が各トレーニングの質(良い動作か、悪い動作か)の判定にどれだけ寄与するかを値で示す「重要度」の算出を試みました。つまり、重要度の大きな特徴量が得られる部位に慣性センサを装着すれば良いと考えたわけです。実際にAIを使い、トレーニングごとに重要度が高かった2つの特徴量からトレーニングの質が判定できるかを検証したところ、わずかな誤判定はありましたが、6種のトレーニングのいずれにおいても質の良し悪しが判定できていました。

このように、トレーニングの質の判定には、1~2個の慣性センサを装着すれば良いことが示されました。このアプローチでは、トレーニングの種別ごとにセンサの位置を変える必要がありますが、コンピュータによる計算法やAIによる判定法を洗練することにより、1か所に付けたセンサで複数のトレーニングに対して質の判定ができるようになるのではないかと考えています。将来はデバイスを一つ身に着けるだけで質の良いトレーニングが行えるようになるかもしれません。

Publication

  • 大前佑斗, 伊藤浩志, 相原伸平, 宍戸英彦, 松本実, 田村尚之, 中川康二, 櫻井義久, 人工知能によるトレーニング運動の質判定に向けた慣性センサ装着箇所の検討, 第13回JISSスポーツ科学会議 オリンピック・パラリンピックと スポーツ医・科学 〜RioそしてTokyoへ〜, 2016.11
  • 大前佑斗, 伊藤浩志, 中川康二, 田村尚之, 櫻井義久, アンサンブル学習の応用によるウェイトトレーニング質判定のための慣性センサ装着箇所の検討, 第17回計測自動制御学会システムインテグレーション部門研究会, pp.1995-2000, 2016.12

Note

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文責: 大前佑斗

日本大学生産工学部マネジメント工学科 専任講師、人工知能リサーチセンター 研究員。ゼミ配属では、プログラミングや人工知能を、時間をかけ丁寧に学習したい方を募集しています。文系・理系、どちらでもokです。

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