初等教育機関における「人工知能」についての教育実践は子どもたちのキャリア形成に効果をもたらす

初等教育機関における「人工知能」についての教育実践は子どもたちのキャリア形成に効果をもたらす

Abstract

小さい頃から生活の中にインターネットがあり、スマートフォンを自由に使いこなせる世代の皆さんの中には、すでに小学生の頃に、簡単なプログラミングをしてスクリーン上のキャラクターを動かしたり、スクリーンの外にあるロボットやモデルカーを動かしたりしたことのある方がいるかもしれません。そのときの「わくわく感」を、将来の夢や進路に結び付けた方もいるでしょう。

テクノロジーがさらに発展し、あらゆる生活の場面で「人工知能」の恩恵を受けるようになった現代において、私たちは、できるだけ早い段階から人工知能についての知識を獲得させ、キャリア形成に結びつける必要があるのではないかと考えました。そこで、ある小学校において、人工知能について知ってもらうための教育実践と、学習者自身が人工知能でどのようなことができるか(できたらいいか)を提案するための教育実践を行い、人工知能分野を将来の自分の仕事として意識してもらえるかどうかを検討しました。

まず、人工知能についての知識を学ぶ授業として、人工知能はどのように学習するのかを「勉強時間からテストの点数を推定する」というモデルを用いて説明した後、世の中で役に立つ人工知能の事例を紹介した上で小学生自身にも考えてもらい、さらに、興味を持ってもらうという目的で、自分の顔写真を「ピカソの絵」のように変える人工知能プログラムを紹介しました。次に、タブレット端末(iPad)を使ったよりインターラクティブな方法で、先ほどの授業で自分が考えた人工知能には何が必要かを考え情報を収集する、それについてKeynoteを使ってプレゼンテーションを準備し練習する、友達同士で発表し合い、フィードバックをもらってより良い人工知能にする、という構成の授業を行いました。

授業が終了した後に小学生に行ったアンケートから、まだ世の中に存在しない目新しい人工知能を提案するためには、将来人工知能を用いて活躍したいという思いと人工知能に対する強い自信が必要なこと、具体性のある人工知能を提案するためには、将来人工知能を用いて活躍したいという思いと人工知能に対する強い自信および好奇心が必要なことが示されました。この「小学生への人工知能教育」に関する研究はまだ始まったばかりですが、文部科学省も人工知能教育を強化する方針を打ち出していることから、今後さらに研究が進むことが期待されます。

Publication

  • 大前佑斗, 古屋達朗, 松下将也, 水越一貴, 八代一浩, 高橋弘毅, 初等教育機関における人工知能の教育実践とキャリア形成・動機付け・ルーブリックの関連分析, 日本教育工学会論文誌, vol.44, no.2, pp.213-223, 2020. [採択率: 39%] [Link]

Note

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文責: 大前佑斗

日本大学生産工学部マネジメント工学科 専任講師、人工知能リサーチセンター 研究員。ゼミ配属では、プログラミングや人工知能を、時間をかけ丁寧に学習したい方を募集しています。文系・理系、どちらでもokです。

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