人工知能によりテニス経験者と未経験者のストロークの違いから、身体動作の「クオリティ」を自動判定する

人工知能によりテニス経験者と未経験者のストロークの違いから、身体動作の「クオリティ」を自動判定する

Abstract

皆さんは、自分の動作の「クオリティ」を考えたことがありますか?また、クオリティの高い動作とはどのようなものでしょうか?身体動作の研究分野では、慣性センサ(加速度・角速度信号の計測器)を用いた身体動作の計測がしばしば行われ、そこから得られる膨大なデータの解析にはAIが利用されています。このような研究の目的のひとつは身体動作のパフォーマンスを上げることですが、現在このような研究のほとんどは、量的な判定(時間や回数)に関するもので、その動作自体の良し悪し、つまりクオリティは判定されていません。

私たちはこれまで、スポーツ中のいろいろな動作を分類するモデルや、動作の回数を判定するモデルを開発してきました。これらに加えて、ある動作の全体としてのクオリティを自動的に判定するモデルを構築できれば、アスリートのパフォーマンスの向上に役立つのではないかと考え、今回、世界的にも競技人口の多いテニスの動作としてフォアハンドストローク(ボールを上げてからラケットを振りぬくまでの約3.5秒間のモーション)に注目してみました。まず、テニス経験者と未経験者に、利き手の手首に慣性センサを装着してフォアハンドストロークの素振りをしてもらい、その動作中の信号を計測しました。すると、テニス経験者と未経験者の計測データの特徴に違いがあること、つまりテニス経験者のストロークモーションは「高クオリティ」、未経験者のストロークモーションは「低クオリティ」と分類できることが分かりました。次に、それぞれのデータに「高クオリティ」、「低クオリティ」というラベルを付けてAIに学習させることで、データのクオリティを自動判断するモデル(畳み込みニューラルネットワーク)を構築しました。そして、AIが学習していないデータを使ってこのモデルをテストしたところ、このモデルが、95%という高い確率で「高クオリティ」と「低クオリティ」を正しく判定できることがわかりました。

このようなクオリティを自動判断するモデルをユーザーインターフェイスと組み合わせることができるようになれば、むやみにストロークの練習をするのではなく、クオリティを確認して調整したうえで、より効果的に練習できるようになるでしょう。自分の動作のクオリティに気を付けるというアプローチは、スポーツに限らず、さまざまな場面において役立つはずです。

Publication

  • Yuto Omae, Basic Investigation of a Method of Assessing Tennis Forehand Stroke Quality Using Convoluted Neural Networks and Inertia Sensors, AIP Conference Proceedings (IC-MSQUARE 2022), [Cite Score = 0.8] [採択率: 56%]

Note

この記事および画像は有償サービスにより作成されたものであり、本ページのみでの利用を想定しています。無断利用を発見した場合はご一報ください。

文責: 大前佑斗

日本大学生産工学部マネジメント工学科 専任講師、人工知能リサーチセンター 研究員。ゼミ配属では、プログラミングや人工知能を、時間をかけ丁寧に学習したい方を募集しています。文系・理系、どちらでもokです。

コメントは受け付けていません。