Abstract
小さいころ水泳教室に通った経験はありますか?あるいは、競泳大会のために一生懸命練習した経験はありますか?どちらの場合も、先生やコーチがタイムを計り、ストロークやターンを解析して、少しでもうまく泳げるように、少しでもタイムが上がるように指導していたと思います。でも、こうした計測や解析には大掛かりな装置が必要となり、指導の効率も良くありません。
そこで、私たちは防水性を持つ安価で小型の慣性センサとAIを組み合わせて、水泳選手の指導に役立つようなシステムの研究と開発を行っています。今回、そのプロトタイプ(試作品)の構築に成功しました。私たちが開発した防水小型センサは、重さが20g、サイズが67mm x 26mm x 8mmとコンパクトでありながら、x軸、y軸、z軸の3軸方向の加速度と角速度(回転運動の速度)を測定します。このセンサを一つだけ腰部に装着すればよいので、泳ぎの邪魔にもなりません。このセンサを使って実際に計測されたデータを、機械学習や深層学習のさまざまなアルゴリズム(計算手法)を組み込んだシステムで解析し、どの泳法(クロール、平泳ぎ、バタフライ、または背泳ぎ)か、各ストロークがいつ始まっていつ終わるのか、ターンに使われる区間はどこからどこまでか、などを推定します。構築したプロトタイプにはユーザーインターフェイスが組み込まれているので、実際に測定されたストロークやターンといった動作データとAIによって推定された時間情報を合わせてスクリーン上で一覧することが可能です。
現在、この競泳指導システムのプロトタイプを大学の競泳選手に実際に使用してもらい、測定・推定データの信頼性、ディスプレイの分かりやすさ、トレーニングでの有効性を評価してもらっているところです。近い将来、選手が一つの小型センサを装着して泳ぐだけで、指導者はストロークやターンの区間推定を簡単に把握して指導に活かせるようになるかもしれません。このような競泳指導サポートシステムが実現すれば、それを初級または中級の選手の指導に活用することで、より多くの選手を上級者にまで育成できるでしょう。その中から国際大会のメダリストが生まれるのも、そう遠い夢ではないかもしれません。
Publication
- Yuto Omae et al., Swimming Style Classification Based on Ensemble Learning and Adaptive Feature Value by Using Inertial Measurement Unit, Journal of Advanced Computational Intelligence and Intelligent Informatics, vol.21, no.4, 616-631, 2017. [CiteScore = 0.9] [Link]
- Masahiro Kobayashi, Yuto Omae et al., Swimming Motion Classification for Coaching System by using a Sensor Device, ICIC Express Letters, Part B Applications, vol.9, no.3, pp.209-217, 2018. [CiteScore (Scopus) = 0.4] [Link]
- 大前佑斗ほか, ディープラーニングと単一慣性センサを用いた競泳指導サポートシステム: プロトタイプ構築, 第35回ファジィシステムシンポジウム講演論文集, pp.743-744 2019
Note
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