在外関係

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授業その1(C言語):

フィンランドに来たばかりの頃(4月上旬あたり)、C言語の授業をやってくれないかとお願いされ、担当しました。C言語は10年以上まともにコードを組んでいませんでしたが、1時間くらいいじってみると概ね思い出せたので、軽い気持ちで引き受けました、が、しかし、実際担当してみるとすごく大変でした。まず、どなたかのサブやサポートということではなくて、本当にメインで1つの授業をすべて任されました。この量が凄まじく多くて、火曜日9:00〜16:00(昼休憩1時間)、1日6時間の授業を8回で構成されています。日本だと90分15回で2単位なので、24回分の授業を行ったことになるでしょうか。この授業は 5 ETCS で、日本の単位数に換算すると2.5単位くらいになるようです(ヨーロッパだと250 ETCSくらいでいわゆる大学卒業水準(学士)になるらしい)。

授業内容はC言語の基礎(変数、配列、if、for、while、関数、ファイル保存、ポインタ、簡単なソフト作成)で、ポインタ以外はそんなに難しくはないのですが、英語で資料を準備して、話さなければならないので、日本語でやるより2倍くらい時間がかかった気がします。もちろんこれだけやっていればいいわけではないので、授業準備は週に2日間しかしないというルールを決めて取り組みました。1日5時間くらい作業した記憶があるので、だいたい1回の授業準備が10時間くらいになります。

大学: Helsinki Metropolia University of Applied Sciences
学部?学科?: School of Information and Communication Technology
コース: Smart IoT Systems: IoT and Networks
学位: Degree Program in Information Technology
キャンパス: Karamalmi Campus (Karaportti 2, 02610 Espoo)
教室: KME662
授業名: C Programming in IoT Devices
単位数: 5 ETCS
受講者数: 38人
授業時間: 1日6時間 x 8回 = 48時間 (9:00〜16:00, 8/20, 8/27, 9/3, 9/10, 9/17, 9/24, 10/1, 10/8, 2024年)

母国語以外で授業をしたので、あまりうまくてきなかったかなと思っていたのですが、他の人から噂話を聞いた程度では案外好評だったようです。例えば、以下のようなメールが来たりして、嬉しかったです(記念に残しておきます)。

I would also like to express my sincere appreciation for your lecture materials. They are, without a doubt, the best lecture notes I have ever read! Each key point is explained so clearly which is really helping me thoroughly understand the concepts. Your teaching style is incredibly effective! I truly appreciate the effort you put into making the lecture materials both accessible and comprehensive! Thank you very much for your dedication and for providing such high-quality lecture materials!

どうでもいいことですが、私の職員証(カードキー)ではエレベータを動かせず、階段で行ったり来たりした記憶があります。頼めば使えるようにしてくれるのでしょうが、Karamalmi Campus には8回しか行かないので、面倒でそのままにしていました。

授業その2(説明可能なディープラーニング):

ヨーロッパの大学群では、夏休みに集中講義(サマースクール)が開講されることが一般的で、別の大学に所属する学生でも受講することができます。あまり詳しくは知りませんが、この単位は自分の大学の卒業にも活用できるということで、学習意欲の高い学生はいろいろな大学のサマースクールに参加して、多くの単位を取得しているようでした。実際に私の所属していた大学でも、ICT summer school が行われており、30の授業が開講されており、1授業あたり20〜30名の学生が参加していました。80名くらい参加できる授業もあったようです。

それで、私もそのうちの1講義を担当することになりました。詳細は以下です。

大学: Helsinki Metropolia University of Applied Sciences
キャンパス: Myyrmäki Campus (Leiritie 1, 01600 Vantaa)
教室: MMC354
コース: ICT Summer school
授業名: Introduction to Explainable Deep Learning (XAI)
単位数: 3 ECTS
受講者数: 27人
授業時間: 1日4時間 x 5回 = 20時間 (17:00-21:00, 8/19-8/23、連続5日間、2024年)

内容は説明可能なディープラーニングで、畳み込みニューラルネットワークについて説明してから、CAM, RAM, Grad-CAM, Grad-RAMの理論と実装方法を説明しました。実装だけできれば良いという考えはあまり好きではないので、理論を説明した上で、Google colab を動かしながら結果を見てみる、というものです。C言語の授業とは異なり連続5日間でしたから、3週間くらいかけてすべての資料を用意した記憶があります。開始時間が17時と遅かったので、事前に見直すことができて、助かりました(準備してから時間が空きすぎると何を書いたのか忘れてしまうわけです)。あと、授業1でも書きましたが、とにかくこちらの授業は長いので、毎回、疲労感が大きかった記憶があります。

どうでも良いことですが、Grad-CAMに現れる偏微分の解析表現が気になったので、(学生の課題作業時間に)ホワイトボード上で計算していたら、それを熱心にノートに取る人がいたり、授業終了後にこれはなんだと言われて解説したりして、熱心な学生が多いなと感じました。余談ですが、Grad-CAM の偏微分は、ニューラルネットワークのウェイト・バイアスパラメータが定数になり、入力画像が変数になるという性質があります。なので、通常のバックプロパゲーションで現れるヤコビ行列の微分表現とは異なる計算結果が得られます。調べた感じ、これをきちんと計算している資料がなかったので、今度真面目に計算してみようと思います。世の中の資料はほぼすべてそうなのですが、偏微分の解を提示せずにGrad-CAMの理論を説明するのは、なかなか乱暴だなと感じます。

最終的に、27名受講して6割ほどが単位取得となりました。必要な知識は事前に開示していますが、サマースクールの性質上、知識水準は様々なので、数学ができなかったり、プログラミングの経験がない方もいて、そういった方は途中で辞退されたようです。ただ、こちらの大学では、単位が取れないことは普通のことのようで、普通のことらしいです。こちらに来て真っ先にいわれた言葉は、「ここは大学なので、単位を全員に出す必要はない。水準以下なら出さないでください」というもので、これが強く心に残っています。

幻の授業:

実は授業1, 2以外にも、C/C++と組み込みシステムの授業をお願いされて、内容的にはできそうではあったのですが、研究に時間を割きたかったので辞退しました。断るとまずいかなとも思ったのですが、No problem! で終わったので、ライトな感じで頼んできたみたいです。

いったところ(大学など):

# ヘルシンキ・メトロポリア応用科学大学(ミュルマキ キャンパス)(フィンランド・ヘルシンキ)
メインでここに滞在しました。フィンランドで一番大きい応用科学大学らしいです。人工知能とか、ロボットとか、農業とか、専用の巨大な研究所がいくつもありました。ピアノが置いてあった。

# ヘルシンキ・メトロポリア応用科学大学(カラマルミ キャンパス)(フィンランド・ヘルシンキ)
C言語の授業を行いました。8回くらい行きました。学食のお盆がないのですべて手に持つスタイルで大変。エレベータが使えない。階段で6階まで。写真あり。

# ヘルシンキ中央図書館(フィンランド・ヘルシンキ)
最高の図書館だと思う。こんな場所みたことない。日本にあると憩いの場になるのだろうなと思う。1階にカフェ。2階に3Dプリンタなど、未来工房の巨大版があり、市民ならば自由に使える?らしい。3階に大量の本で広い。何度も行きました。

# トゥルク大学(フィンランド・トゥルク)
2万人弱の学生がいる、巨大な大学です。文系から理系まで。8/15〜8/18の間に滞在。複数の大学が共同で運営している XXX City がたくさんあり、見応えがありました。8/15〜8/18の出張で滞在。

# トゥルク応用科学大学(フィンランド・トゥルク)
データCityとか、IT Cityとか、心が躍る施設あり。8/15〜8/18の出張で滞在。

# オーボアカデミー大学(フィンランド・トゥルク)
ブックタワー図書館というところを少し視察。木とゴールデン。8/15〜8/18の出張で滞在。

# トゥルク市立図書館(フィンランド・トゥルク)
巨大。8/15〜8/18の出張で滞在。

# ミュンヘン工科大学(ドイツ・ミュンヘン)
ガーヒングキャンパスにある数学科・情報学科をみてきました。最適化周辺の研究室(数学科)をぐるっと見回ってから、医療用の機械学習の研究を見ました(X線画像による病気の検出など。こちらはおそらく情報学科だと思われる)。関係ないですが、数学科に日本人の博士研究員がいて、立派だなぁと感じました。日本人がこのような名門大学で勝負できているのは、とてもすごいことだと思います。本当は話しかけたかったのですが、アポイントもないですし、真面目に計算してそうな雰囲気を感じたのせ、すぐに退散しました。数学科・情報科のキャンパス内に巨大な滑り台が2つ設置されており、3階からすぐに1階に移動できる仕様になっていました。遊び心があって良いと思います。

# マックス・プランク宇宙物理学研究所(ドイツ・ミュンヘン)
ミュンヘン工科大学 ガーヒングキャンパスの隣にあり、宇宙関係の研究に少しだけ関わっているので、興味本位で見てきました。数年前、ブラックホールの概形を捉えることに成功したのは有名な話ですが、それとスパースモデルとの関係などの話を少しだけ聞きました。最近は研究で線形代数に触れる機会が多いので、ここら辺は聞いていておもしろいです。私の博士後期課程の指導教員が過去にマックス・プランクの研究所でポスドクをやっていたという話は何度か聞いていて、ここかなと思ったのですが、マックス・プランク重力波物理学研究所という別の場所だったみたいです。あと、関係ないですが、プラネタリウムが併設されていました。

# ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン(ドイツ・ミュンヘン)
数学・情報学・統計学部と病理?のような学部を視察しました。ガラスに数式がずらっと書かれたりしていて、おもしろかったです。なんの式かはわかりませんでしたが、なんらかの関数のテイラー展開のような形に見えました。テイラー展開は大事です。機械学習の基本で、主に目的関数の極値解析で利用されます。病理系の学部では、遺族や葬儀屋に対するメッセージ(ご遺体は丁寧に扱うことの宣言?)なんかが壁に貼ってあり、これが少し心に残っています(私も亡くなられている方のデータを扱うことがあるため)。

# ミュンヘン工科大学医学図書館(ドイツ・ミュンヘン)
英名 TUM Branch Library Medicine。
医療系の研究を進めるため、視察しました。

# バイエルン州立図書館(ドイツ・ミュンヘン)
でかい!しかし入りにくかったです。医療系・情報系の書籍を閲覧しました。周辺を囲うように栗の木が生えていて、栗がぽとぽとと不定期に落下し、その音がなんとなく素敵でした。

# ドイツ博物館(ドイツ・ミュンヘン)
世界一の科学力

# ペロポネソス大学(ギリシャ・カラマタ)
国際会議の発表場所の近くにあったので、行ってみました。

宿泊場所:

# Noli Studio Myyrmäki(フィンランド・ヘルシンキ)
1年弱滞在。家電や食器などがすべて用意されており、すぐにそのまま暮らせました。よかったです。7階に住んでいました。

# Bob W トゥルク(フィンランド・トゥルク)
エレベーターが怖い。ドアを手で開けて乗る。上下移動中はドアがない。フレンチプレスのコーヒーメーカーがあった。初めてなのでよくわからずに触ってみたら、プレスが強すぎて爆発してしまった。Google Map の画像がおかしい(巨大な建物のごく一部がこのホテルなのだが、画像を見るとすべてがホテルかのような看板がついている。実際に行っているとそんな看板はない)。

# Dein Apartment(ドイツ・ミュンヘン)
ミュンヘン開催のオクトーバーフェストと重なってしまい、ミュンヘン市内のホテルがすべて異様に高騰していました。ミュンヘン市内からバスで30〜40分ほど離れた不便な立地でしたが、ここしか泊まる場所がありませんでした。部屋はきれいでしたが、大変暑く、エアコンが欲しかったです。

文責: 大前佑斗

日本大学生産工学部マネジメント工学科 専任講師、人工知能リサーチセンター 研究員。ゼミ配属では、プログラミングや人工知能を、時間をかけ丁寧に学習したい方を募集しています。文系・理系、どちらでもokです。

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