Abstract
病院で検査を受けると、どんなに簡単で痛くない検査であっても、ドキドキする人は多いでしょう。体に針やメスを入れない検査方法として、X線画像などを使った画像診断があります。撮影装置の前でじっとしていれば、体の気になる部位の画像(写真)ができあがり、それに対して医師が、「○○のような特徴が画像に見られるので、××のような健康問題がある可能性が高い」というふうに、積み重ねた経験と知識に基づいて診断を下します。この方法の問題点は、判断が主観的になる可能性があることと、判断に時間がかかることです。それならば、客観的に迅速に判断できるようにならないか、と考えたときに有効なのがAIの活用です。実際、疾患があるときに画像に現れる特徴を「学習」したAIが画像診断を行うようなモデルがすでにいくつか開発されています。
例えば、心不全を予測する方法として、肺動脈に細い管(カテーテル)を入れた上にさらに膨らませ、そこにかかる圧(pulmonary artery wedge pressure:PAWP)を測定するという、体に非常に負担のかかる方法があります。このPAWPが高い場合の胸部X線の画像の特徴というのが分かっており、それを学習したAIを使ったモデルが開発されています。今回、私たちは、このPAWPを推定する開発済みのモデルに注目し、それ専用のグラフィカルユーザーインターフェイスを開発しました。これがあると、コンピューター上でマウスを動かしてクリックするだけで、PAWP推定値と、その推定には画像上のどの領域が使われたかがスクリーン上に示されます。もし、AIが適切でない領域を使っていたら、領域を補正し、それに従って再度PAWPを推定することもできます。
私たちは、AIを使ったモデルを実社会で活用するためには、AIによる予測が信頼できるかに加えて、使い勝手がよく必要な機能を備えた専用のグラフィカルユーザーインターフェイスの開発が非常に大事だと考えています。今回、循環器内科の専門医に対してアンケート調査を行ったところ、開発したグラフィカルユーザーインターフェイスに対して非常に良い評価を得ました。このようなシステムが病院などで活用されるようになれば、検査結果をドキドキしながら待つ時間が短くなるかもしれません。
Publication
- Yuto Omae, Yuki Saito, Yohei Kakimoto, Daisuke Fukamachi, Koichi Nagashima, Yasuo Okumura, Jun Toyotani, GUI System to Support Cardiology Examination Based on Explainable Regression CNN for Estimating Pulmonary Artery Wedge Pressure, IEICE Transactions on Information and Systems, 2022.x. [IF: 0.695] [採択率: 39.9%]
- Yuki Saito, Yuto Omae, Daisuke Fukamachi, Koichi Nagashima, Saki Mizobuchi, Yohei Kakimoto, Jun Toyotani, Yasuo Okumura, Quantitative Estimation of Pulmonary Artery Wedge Pressure from Chest Radiographs by a Regression Convolutional Neural Network, Heart and Vessels (Springer), 2022.02. [IF: 2.037] [採択率: 19%] [Link]
- Tomoki Miura, Yuto Omae, Yuki Saito, Daisuke Fukamachi, Koichi Nagashima, Yasuo Okumura, Yohei Kakimoto and Jun Toyotani, Three-State Classification of Pulmonary Artery Wedge Pressure from Chest X-Ray Images Using Convolutional Neural Network, Proceedings of the International Conference on Innovative Computing, Information and Control (ICICIC 2022).
Note
この記事および画像は有償サービスにより作成されたものであり、本ページのみでの利用を想定しています。無断利用を発見した場合はご一報ください。